「急いで、病院に連れていったけど全く目覚めなくて……。不安で不安でどうしようもなくて、原因もわからなくて…」
「うん…」
僕はただ返事をする。
「本当にどうしようってなった時に、パチって目を開けて起きたの。何事もなかったようにね」
小夢ちゃんは夢乃ちゃんを見つめて言う。
「それからは、毎日一時間だけ起きられる生活が始まって、起きて一日分の栄養を取ってまた眠って、起きての繰り返し」
なるほど。だから夢乃ちゃんはあんなに食べるのか。僕は納得した。
「それでも、お姉ちゃんと一緒にいたら凄く楽しいし幸せ。でも私はこのままじゃいけないと思ったの。だから変わった」
「変わった…?」
「そうそう、前言ったでしょ。この髪、白かったけど黒に染めたし、強気になって。それで今日に至る……の」
小夢ちゃんは話を終えて、手をパンと叩いた。
「ごめんね、聞いてもらって。あんまり他に聞いてもらえる人いないしさ」
「ううん、話してくれてありがとうね。小夢ちゃん」
僕はお礼を言う。
「じゃ、また来てね。毎日でも良いよ。手伝ってくれるならね」
小夢ちゃんはニコッした顔でそう言う。
「うん、毎日来るよ。手伝うしね」
そんな約束をして、僕は病室を出た。


