僕のその質問に対して小夢ちゃんは少し考えるような顔をした。


「分かんない」


そう、あっさり言った。


「難病?奇病?どんなのかは分かんないけどただ一つ分かるのは、今の医療で分かんないって事が分かる」


そう続ける小夢ちゃん。


「つまり……。どっかのお偉らいお医者様でもどっかの天才科学者でも…お姉ちゃんを治す事は出来ないの」


寂しそうに、言う小夢ちゃん。


僕は何も答えなかった。いや、答えられなかった。


最近出会ったばかりの僕が答えていいものではない。


「少し、昔の話をしても良い?」


小夢ちゃんはベッドの横に置いてある椅子に腰掛けて聞いた。


僕は言葉を使わずただ、頷いた。


「私が小学生の頃、私は引っ込み思案で凄く暗い子だったの」


小夢ちゃんはぐっすり眠る夢乃ちゃんに布団をかけて言う。


「それでも、私にはまだ普通に起きていられるお姉ちゃんがいた。その気になれば徹夜もできるお姉ちゃんが話し相手になってくれて、友達がいない私と遊んでくれた」


夢乃ちゃんを愛おしい感じで見る小夢ちゃん。


「私はそんな関係で良いと思ってた。大人になってもお姉ちゃんが守ってくれるって」


「でも、お姉ちゃんの中学校の入学式の朝に……それじゃ駄目だって思わされた」


僕はなんとなく分かった、が何も言わない。今はただ小夢ちゃんの話を聞くだけだ。


「入学式の朝。お姉ちゃんは玄関で倒れたの……ううん。今思えばきっと眠ったんだね」


あぁ、想像ができた。きっと本当に倒れるように眠ったんだろう。