「別れたいって言うのは……

家にいても気まずくて疲れる一方なんだよな、お前がいると。

お互い微妙に避け合ってて、これ一緒に暮らしてる意味無いだろ?


今までは瑛梨奈の為に我慢してたし、折を見てまた元の仲に戻れないかとも思ってたけど……。


お前だって、俺のせいで疲れてるだろ?」


「……」



夫は決して、離婚のような重大な話を軽はずみに切り出す人ではない。


夫婦関係の修復が絶望的である事は明らかだった。



理想通りの、幸せな家庭


その全てを、私は完全に失ってしまった。




そう言えば

瑛梨奈を亡くし、夫に離婚を言い渡されて以来、幽霊の悪夢に悩まされる事はぱったりと無くなった。


いろんな事がありすぎて、もはや幽霊どころではなくなってしまったからだろうか。


或いは……

この惨めな「敗者」の姿に、彼女はようやく満足したのかもしれない。