「あの……先生？」


私は娘のクラスを担任している女性教師に向かって訊ねた。


「どうして、瑛梨奈の相談に乗ってあげなかったんですか？」


「……忙しかったもので」


「忙しかったって……そんなに、子供たちの命より大事な仕事をしてたんですか？」


「申し訳ありません。

まさか自殺してしまうなんて……」



私にこの人を責める権利があるのかどうかは、微妙なところである。


けれど唯一、瑛梨奈が自発的に助けを求めた「生きている」人

そして、


それをはねつけた人。



どうしても、責めずにはいられなかった。



それから私は、瑛梨奈のクラスメートの女子児童たちにこう言った。


「あなたたちのせいで、人が1人死んだんだからね。

その事を重く受け止めて、一生消えない罪を背負って生きていきなさい」



でも、いくら罪を背負おうが

彼女たちはあくまで、生きている。


きっとこれから、成長して夢を叶えたり恋をしたりして、人並みの幸せを手にしていくのだろう。



本当に、どうして娘が死んでこんな人たちがのうのうと生きていられるのか

不思議で仕方無かった。