瑛梨奈は本に栞を挟むと、私に対してこう尋ねた。


「ママは、本を読んで価値観がガラッと変わるくらい衝撃を受けた事、無かった?」



……はて、どうであったか。


自分の学生時代を思い返してみると、全く読書をしない子供でこそなかったものの、友達や彼氏と遊ぶ事の方を重要視する少女だった為か、本から何か強い影響を受けた記憶は無い。


友達との話題作りや流行について知る為に、雑誌なら度々買って読んでいたが。



考え込む私の様子を見て、瑛梨奈は微かに笑みを浮かべた。


それは、咄嗟に答えが出ない私をからかうような笑みのようにも見えた。


「そっかぁ。

ママには無いのか、そういう事。


この本って、そういう衝撃の連続なの。

『こんな意地悪な事考えていいんだ?!』とか
『みんなと同じ物を好きにならなくてもいいんだ?!』『そうやって無理するのって馬鹿みたいな事なんだ!』って。

面白いし、読むと元気が出てすごく気分がいいけど
ただそれだけじゃなくて、なんか自分がアップデートされてるみたい」