と、考えかけて、私は頭を振った。


あり得ない。


大体、もし仮に霊魂や怨霊といったものがこの世に存在するとしても、今更20年も前のいじめの事など恨むものだろうか。



経験が無いので、いじめの被害者の心情など知る由も無ければ興味も無い。


が、そう言えば、いじめというのは

「した方はその事を忘れても、された方は決して忘れない」

ものだと聞く。


いじめに遭った経験を元に、この歳になって本を出版したくらいなのだから、やはり幽霊の方では忘れたり水に流したりはしていないのだろうか。



――全てが推測の域を出ない。


しかし偶然にしては出来すぎた事ばかり――



考え疲れ、天井を見上げてうとうととしていると、不意に人の気配を感じた。


頭を起こして視線を巡らせたとき、視界の片隅に一瞬、じっとりと佇む影が写り込んだような気がした。