朝。


いつものように夫と娘を送り出し、朝食の洗い物を片付けて洗濯に取り掛かる。



洗濯かごの中に、夫のシャツがあった。


ゆうべも帰りが遅かった事を思い出し、シャツに鼻を近付ける。


消毒液の匂いがほんの微かに混じった、私がよく知る夫の体臭。


その他の――例えば女物の香水のような匂いは、嗅ぎ取れない。



釈然としないような、安心したような、微妙な気持ちでシャツを洗濯ネットに突っ込み、洗濯機を回す。



やはり友人との食事の帰りに見たのは、夫によく似た別人だったのだろうか。



でも男の方が別人であったとしても、その隣を歩いていた女の方は、あれはどう見ても……


いや、それを言ってしまえば

男の方だって、どう見ても……。