まだ飲めぬ安酒に目を輝かせる瑛梨奈の事を思うと、私の心は暗くなった。


が、何となく主婦仲間たちには、そんな様子を悟られたくない。


彼女たちの前では、常に誰よりも余裕と幸福感に満ちた女性でありたい。



私はバッグからパウダーコンパクトを取り出すと、鏡に向かって口角を上げ、笑顔を作った。


そして、これから食べるフルコース料理の事を考える。


フォアグラやビーフ、ワイン、デザートは何だろう。


瑛梨奈には何かスイーツをお土産にして……


そんな事を考えているうちに、タクシーはレストランのエントランス前に到着した。




ゆったりと料理を楽しみながら、子供や夫の事、今年の流行などの話に花を咲かせ、店の前で主婦仲間たちと別れた。


瑛梨奈への手土産、小さな箱詰めのキャラメルチョコレートを携え、タクシーで自宅へと向かう。