瑛梨奈の誕生日プレゼントにと姑が買い与えた、児童向けの芥川龍之介作品集。


それを隅に追いやって、瑛梨奈が手に取りやすいのだろう、本棚の中段にずらりと並ぶのは

あろう事か、幽霊の著作の数々だった。


あのふざけたタイトルのデビュー作「かみさまのピーチフィズ」もある。



「ママ、この人だってちゃんとした作家だよ。有名だし。

知らないの?」


「ママはそんな人、知りません。

それより、勉強は済んだの?」


「当たり前じゃん。


じゃ、ミルクティーありがとうね」


そう言って、瑛梨奈は本の続きに戻ってしまった。


私は仕方無く部屋を出た。



瑛梨奈が幽霊の本の愛読者だった

よりによって。



娘の本棚のラインナップに口出しするつもりは無い。


もう小学4年生なんだし、読みたい本は自分で選べるはず。


そして純文学でも漫画でも、好きなものを何でも読めばいい。



でも、あの暗い幽霊が書いた本って……。