先生の代わりに飛び出してきたのは__中原さん。


「とうしたんですか⁉︎」


駆け寄って支えると、肩から血を流している。


「あ、あいつがいきなり斬りかかってきやがった‼︎あいつは相当な手練れ。素人の振りして忍び込んできたスパイだ‼︎」


「そんな、まさか先生が…」


ゆっくり__からくり扉が廻る。


そこに、先生は立っていた。


その手に刀を握りしめて。


「先生、まさか先生が…」


「間抜けな振りして騙してやがったんだ‼︎」


今にも斬りかかろうとする中原さんを抑え、一歩、前に進み出た。


そんなはずはない、と。


しかし__。


「塚田クン、君はまだまだお坊ちゃんだね。そのまさかだよ」


「そんな…」


「そう。俺がスパイなのさ」


先生が刀を構える。


この数日間の、気の抜けたなんとも言い難い、それでもよく笑ったな、なんて思い出してみる。


全くやる気はないし、口を開けば文句ばっかりだったけど、楽しかったな__。


先生が刀を振り上げ、ゆっくりと振り下ろすのをボクは、両手で受け止め。


「な、なにをする‼︎塚田‼︎」


中原さんが叫ぶが、もうどうにもならない。


「ボクに縄術を教えてくれたのは、中原さんじゃないですか。絶対に解けませんよ」


激しく身をよじった中原さんは、畳の上で転げ回る。しかし、腹に括られた縄は解けない。


「塚田、貴様、どうしてわかった⁉︎」


「どうしてって、先生ドン臭いんで無理ですよ。先生の鈍臭さはボクが1番見てきましたから。手裏剣は後ろに投げるし、クナイで手を切るし、ピーラーでも手を切るし、なんにもしてないのに転ぶし___」


「塚田クン、良いとこ言おうか?」


「ただ先生は、裏切ったりしませんよ」