「私の着替え知らない?
ここにかけてたつもりだったんだけど」

一応バスタオルを巻いて声だけで会話する。

『フフー。
今頃気づいたの?

さっきヒロちゃんが出る時、江梨ちゃんの着替え全部持って出ちゃったよ』

……!!

なんて悪戯な。

考えもしなかったし、疑いもしなかった。

しかし今思えば微笑ましい。

会えない今ではお金で買えない宝物だ。

ヒロちゃんも覚えているかな。

そんな小さな、ささやかなあの頃のこと。