睦月君のラーメンは、ダメになってしまった。

私のを分けてあげようとしたら
先生が自分のを分けるからいいと言ってきた。

睦月は、いつの間にか泣き止んでおり
先生のラーメンをよそってもらうと
黙々と食べていた。

そして食べた後にスヤスヤと
お昼寝をしてしまう。

ソファーで眠ってしまったので
ブランケットを掛けてあげる。

それを見つめていたら

「しかし、睦月が泣いた姿なんて
久しぶりに見たな。
めったに泣かない奴だから」

浜野さんがテーブルの方で
座りながら呟いてきた。

「そうなのですか?」

確かに睦月君は、めったに泣かない。

こないだのデパートでお腹空いたと
泣いたのが初めてだわ。

そもそもあまり表情を出さない子だし

睦月君を見るとスヤスヤと眠っている。
寝顔もとても可愛らしい。

「コイツは、赤ん坊の頃から
あまり泣かない奴だったからな。
必要最低限でも泣くより訴えてきたぐらいだし」

先生がお茶を淹れながらそう言った。

「あーそういえば、そうだったな」

「睦月君は、どんな感じだったのですか?
訴えるとは?」

奥さんの話をされるのは、抵抗あるくせに
睦月君の赤ちゃんの頃の話は聞きたいなんて
勝手だな。自分。

「睦月は、あれだな。
オムツの時も起きた時も反応を示さない。
お腹空いた時は、さすがに泣くが
声出さないから気づくのが
たまに遅れるんだよな」

浜野さんがアハハッと笑いながら言う。

「まぁな。起きたら無言で
目で訴えてくるからな。コイツ。
聞くと今と同じで、首を振るうか頷くかだし
あまり今と変わらないな」

先生も教えてくれる。

なるほど…今と変わらないのか。

睦月君らしいといえば睦月君らしい。

赤ちゃんの頃から変わらない。
想像したらクスッと笑えてきた。