窓の向こう、彼は両手で胸の前でバッテンを作る。それから首を振って、カーテンを閉めてしまう。
・・・ああ、胸が痛い。
あたしは本を放り出して枕に顔を埋めた。
今窓を開けてくれたら、あたしはあなたを笑わせるのにな、そう思って。
こちらはカーテンも窓も、開けっ放しだよ。
いつでも君を受け入れるんだよ。
だけど、相手のは窓もカーテンもしまったまま。
手を伸ばせば届く距離・・・・だけど。だけど、一度だって伸ばしたことなどないし、心の距離はちっとも縮まってくれはしない。
夜はゆっくりと世界を支配して、もうすぐ眠る時間になる。あたしはため息をついて、立ち上がった。
それからゆっくりと、カーテンをしめた。
・沼上ケイコの場合 終わり