窓辺には切ないの欠片がいっぱい散らばっている。
光がキラキラ差し込み、香りつきの風が通り抜けるそこで、あたしは隣の家の彼と昨日のテレビのロードショーの感想を言い合う。
違う日は、学校のニュースや友達のおかしなクセについて。
美味しいお菓子を交換することもある。
風が彼の柔らかい前髪を揺らして通り過ぎる。
手を伸ばせば届く距離。
だけど、そんなことはしない。
窓を開けば彼が見える。大体は気がついたら笑顔をくれる。あたしもヒラヒラと手を振って返す。そして、後はお互いに知らんふりで日常を過ごしている。
彼が彼女に電話する。
あたしは自分の部屋で本を読んでいる。というか、見てはいるけど頭には全く入っていない状態でベッドに寝転んでいる。
気になる隣の窓の向こう、彼が頭を掻き毟っている。
多分また、彼女と喧嘩したのだろう。窓がしまっているから声は聞こえない。だけど心配になって、あたしは何度も窓の向こうへ視線をやる。彼もそれに気がついている。たまに目があうから。
電話が終わって携帯をベッドに放り投げ、あたしに向かって肩を竦めて見せる。あたしは本を置いて両手で〇を作って首をかしげる。
『大丈夫?』
口をその形に動かす。