きっと君が飲む頃には、ココアも冷めているだろう。

それでも私は、君にホットココアを飲んで欲しい。

あたたかいココアを飲んで欲しい。

ほわほわと湯気の立つココアと、甘い匂い。

涙を拭って、私は手紙の続きを書く。

早くしないと、君が帰ってきてしまうから。




『幸せになってよ』

最後の一文を書いた時は、もう心がいっぱいで。

溢れた涙が止まらない。



『追伸
私が君に淹れる、最初で最後のホットココアです。
たっぷり、愛情を込めました』



やっと全てを書き終えて。

少しぬるくなってしまったココアの隣に、そっと置く。


こんなことをしたら、優しい君はきっと私のことを嫌いになれない。

そう、わかってるけど。

それでも、書かずにはいられなかった。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

そっと、部屋を出る。

閉じた扉の音が、大きく聞こえた。