私が退院して、少し経ったある日。



「咲誇...

ちょっと連れて行きたい所がある」



蓮央にそう言われて、彼のバイクに揺られること数時間。



着いたのは、緑が溢れるどこかの施設だった。



『緑ヶ丘 青年の家』──...


施設の看板には、そう書いてあった。




「ここは......」


「あの戦いの時、言ったろ。翠斗に会わせたいって、さ」



あ...そういえば。


変態男とタイマンで戦う時、蓮央に言われた気がする。



「てことは...ここに...翠斗、が?」


「あぁ。調べた限りではな」


「そうなんだ……」


「行こう」



翠斗が、ここにいるの...?


驚きつつも、蓮央に手を引かれながら施設に足を踏み入れる。


受付らしきカウンターの中にいる、少し丸いおばさんと目が合った。


ニコリと微笑む、やさしそうなおばさん。



「こんにちは。どういったご用で...?」


「面会に来たんです。川瀬翠斗さんに」


「翠斗くんに...?......分かりました」



目を丸くされたけれど、おばさんは戸惑いながらも誰かに電話をしていた。