「ハハ、マジでさ…お前、馬鹿じゃねぇの?」



いきなり、沢口啓明の顔が無になった。


ゾクリと背筋が凍るのがわかる。



「何でアイツに若沢を任せなきゃならねぇんだよ。絶対にお断りだね」


「え……?」



お断りって……


どういう意味?


沢口啓明は私に目を向け、「あぁ」と何かを思いついたように言った。



「もしかしてお前、知らない感じか?」


「何、を……?」


「諒真の母親の話」



諒真さんの……お母さん?


いたことは知ってる。


『若沢』という組名は、諒真さんのお父さんとお母さんの苗字をとって付けられたはずだから。



「諒真の母親の苗字、知ってるか?」



苗字……?


蓮央が昔、海で言っていた気がする。



『若沢』だから…沢……沢……



「沢、口……」



うんそうだ、沢口だ。


沢口。




……沢口?