「沢口啓明……」



ふらつきながらも立ち上がり、目の前に立つ茶髪男を睨みつける。



「何だよ。言っとくけど、喧嘩なら売らないほうがいいぞ。思わず撃っちまうから」


「私が、アンタなんかに喧嘩を売るわけ無いでしょ」



銃とかナイフとか使ってきそうなこの男相手に、素手でやるのは危険すぎる。


私がしたいのは、喧嘩じゃない。



「アンタは……諒真さんと、どういう関係なの?」


「…諒真……だと?」


「あの写真には、諒真さんとアンタが写ってた。家族って、どういうこと?諒真さんは、一人息子じゃないの?」


「…………」



私の問いに、口を閉ざす沢口啓明。


私を見つめるその目は深い闇を纏っていて、まさに『怖い』の一言だ。



「……原田、海利を連れてけ。そいつにはもう用はない」


「はっ。……おい、こっちに来い!」



原田と呼ばれたスキンヘッドが、北苑を引っ張って部屋から出ていく。


それに抵抗しながらも、北苑は私の名を呼んだ。



「咲誇っ……」


「北苑…ごめんね」



迷惑かけて、ごめん。


上手くやれなくて、ごめん。


わがままで……ごめん。



いろいろな思いを込めて、もう一度、北苑の方を向いた。




「……ごめんね」




そう言ったのが最後……





──バンッ!!




乱暴に、ドアが閉められた。