北苑は数秒黙った後、ゆっくりと、血に濡れた唇を動かした。



「…その女は、俺の大切な奴の……大切な女だから」


「はぁ?」



拍子抜けしたように眉をひそめる沢口啓明。


それに構わず、北苑は続けた。



「そいつを傷つけないと、アイツに誓った。
俺はどんな罰でも受けます。だから、その女を解放してください」



真っ直ぐな目で沢口啓明を見据え、頼み込んでいる北苑。


何で、そんなに必死なの?


私なんかを守るために、どうして自分を犠牲にするの?


みんなみんな……。


あの時もそうだった。


翠斗との、戦いの時も。


私を庇って、傷つくのはみんな。


私は、所詮、何もできない女なの?





……ううん、違う。




私にだって、できることはある。