1人、マンションの広い廊下を歩く。


……これで、いいんだよな。


アイツはこれできっと、泣くことはない。


泣かせたくない。


もう……涙は見たくない。


京也なら、お前を笑顔にしてくれるだろ?


本気でお前を想っているのだから。


これでいい。




・・・そう、思いたいのに。




俺の心は、そうは思ってくれない。


咲誇を手放したくなくて、仕方ない。


他の奴に触れさせたくない。


京也に渡すなんて、もってのほか。


咲誇は、俺のものなのに……。


醜い嫉妬心だけが心に渦巻く。