「……結羽が、笑った……」




そう小さくつぶやいて、顔を一瞬にして赤く染め上げた。


そ、そんなに珍しいことだろうか。


わたしだって笑うことくらいあるのに。



「き、木林くん」



「ちょっと待ってそれ反則だろ……」





膝を抱え込んでふさぎこんでしまった彼。


今度はわたしが戸惑う立場になってしまった。



え、何が反則なの?


なんのルールを犯したのだろうかわたしは。




とりあえず顔を上げてもらおうと、手を伸ばしかけたそのとき。


またしても勢いよく頭を上げるから、わたしはまた驚いてしまう。


手は空中で止まったまま。



顔を上げた彼は、本当に元気なわんこのように笑っていて。