想像以上に細くて柔らかかった彼の茶色い髪。


それを2、3回撫でると、驚いたように彼がばっと頭を上げた。


ほんの少し頬が上気している。




「な……何っ!?」


「あ、いえ……なんとなく」


「なんとなく!?」



わたしの行動にも、いつも通りすぎるわたしの声のトーンにも驚いたのか、異常に瞬きの回数が多い。



わたしも驚いているんだ、どうしてこんなにわたしが落ち着いているのか。



さっきは、このまま倒れてしまいそうとまで思ったのに。


走ったせいで上がった心拍数も戻った今は、まるで普通だ。




「木林くん。ひとつ、聞いてもいいですか」


「は、はいっ! なんでしょうか!」



そう前フリしてみると、わざとらしく姿勢を正す木林くん。


どこかの騎士のように、片膝をついてわたしを見つめた。