「ありがとうございます。すごい気に入りました」


「それは光栄です」



毛先を見つめてつい笑顔になると、侑心くんがわざとらしくお辞儀をした。



「じゃあ、行こうか」


そう言って彼は、手を開いてこちらに差し出す。


まだ慣れはしないけれど、ためらいなくその手にわたしの手を重ねた。



この約半年で慣れたことといえば、


前髪を上げることと、デートの時はコンタクトにすることくらい。


手をつなぐことも、名前を呼ぶことも、毎回どきどきしてしまう。



それでも侑心くんはそれを許して急かさずにいてくれるから、わたしは安心して彼の隣にいられる。