甘々王子にユウワクされて。



とても落ち着く大人っぽい声が背後からしたことに驚いて、


しまうまさんの拘束が揺らいだのをいいことにばっと振り向く。



「……結羽ちゃん。大丈夫?」


「篠田先輩……!」



黒ぶち眼鏡の奥で優しそうに笑いながら、わたしにたずねてくる篠田翔先輩。


わたしを助けてくれたんだ……。



「さて君。俺が君に言いたいことは3つ。
 図書室のドアは静かに開閉する。大声出さない。女の子に手荒なまねしない。
 ……OK?」



今度は少し冷たい目をして、でも口角は上げたまま、諭すようにしまうまさんに言う。


わたしの頭上で睨みあう二人。


わたしはうろたえるしかなかった。



だけどすぐに、しまうまさんはわたしから手を離して。



「あぁはいはいわかりました、じゃあ結羽教室で!」


篠田先輩に睨みながら言った後、わたしに笑いかけて、図書室を出て行ってしまった。


すぐに廊下から、おう侑心じゃん、なんて声が聞こえてくる。