「こ……ここは神聖な図書室です! こういうことはやめてください」
怒りと、慣れない整った顔との近さのせいで顔を真っ赤にして言うわたし。
説得力がないことは百も承知だ。
だけど本当困ってしまう。
ほら、この静かな図書室、その中の視線はすべてわたしたちに向けられている。
もうすでに迷惑かけてるじゃない……!
それに、この空間には、絶対に迷惑をかけたくない人もいるのに。
もうどうしよう、と目を細めたとき。
「……きみ、手を離してもらえるかな?
結羽ちゃんが困ってるんだけど」
低く甘い声が耳元から聞こえた。
どくんと鼓動が跳ねる。
少し視線を下げると、わたしの腕をつかんでいた手、さらにその上に添えるように置かれた手。
その腕はわたしの背中側から伸びている。

