だけど木林くんは、つかつかと高槻くんの元に歩み寄って、顎を片手で持ち上げて勢いよく顔を上げさせた。
「忘れる必要なんてねーだろ。俺だって別にゆうを忘れて結羽を好きになったわけじゃない。
ゆうを好きでい続けるのは辛いだろうけど……ゆうを忘れる辛さよりは、何倍もマシだろ!」
そう言って、目を細めて笑う木林くん。
「大体お前ばかじゃねえの? お前がゆうの病院に頑なに行こうとしなかったのってもしかしてゆうを忘れようとしてたからとか言うのか?」
「う……っ、うるさい」
図星だったのか、からかうような木林くんの口調に顔を赤らめて返す高槻くん。
そして木林くんは高槻くんの胸に拳を当てて、
「会いたいなら会いに行ってやれよ」
そう言って、高槻くんに背を向けた。
「鈍感な俺だって気づいてたほど、ゆうはお前のことが…………なんだから」
小さく呟いた言葉は、多分わたしにしか聞き取れなかった。

