だけど彼は。
「お、上目遣い。いいねぇー」
なんて言ってわたしをからかってくるだけ。
「そ、そんなつもりじゃないです。
忘れ物があったのなら部活に戻ってください、部長がそんなのでいいんですか?」
起き上がって紙を裏返して、伏せた拍子にずれたメガネを直しながらドアのほうを指して言う。
からかわれるのには、慣れていない。
そもそも本当に、バッシュを忘れるバスケ部部長なんて……大丈夫なんだろうか。
それでもしまうまさんは動こうとしないで、わたしをじっと見てくる。
「……なんですか? 邪魔しないでほしいんですけど」
こんなんじゃ描くことなんてできないし。
「いや俺、人が描いてるの見るの好きなんだよね。
結羽美術部……いやこの学校美術部ないっけ、文芸部?」
「だから貴方が邪魔で描けないんです!」
……調子が狂う。

