隣の席だからか、毎朝挨拶してくれるけれど。


わたしはろくにそれに返事もできず、なんとなく今のように会釈で流してきてしまっている。


それなのに突然二人っきりなんて……少し気まずい。



「俺教室にバッシュ忘れちゃってさ、
 結羽は何してんの? そんな隅っこで」


「あ、ちょ……!」



急に話しだして、机をひとつ教室のぎりぎり隅まで運んで作業していたわたしのもとへ歩いてくる。


そしてなんの許可も得ず、机の上を覗き込んだ。




そこにあるのは、



散らばったクロッキー紙と、一枚の画用紙、数本の鉛筆。


画用紙には、ポニーテールを揺らして明るい笑顔を見せるセーラー服を纏った女の子と背景の教室の絵。


教室の細部に至ってはまだ書きかけだけど。



……文芸部であるわたしの作品。