「……ゆう」



すると、わたしの名前を反芻して、少し驚いた顔をする彼。


いったいなんなんだろう、さっきから。




でもすぐに彼はなんでもないように笑って、



「結羽か! よろしく!
 さっきはごめんねー驚かせちゃって!」


人懐っこいわんこのような笑顔を向けてきた。



それにわたしはついうろたえて……少し視線を斜め下に落として会釈だけして、無理やり会話を終わらせる。


コミュニケーションが苦手な自分に自己嫌悪。




心の中でため息をついたら、そのとき。


左隣の高槻くんが突然立ち上がって、わたしの前を通過して廊下のほうへ向かっていく。


もうあと少しで予鈴なるのに……。



「晃斗、どこ行くの」



しまうまさんも気になったのか呼びとめる。