「前に話したあたしの彼氏、いたじゃない?
その人が、今日お家に遊びに来たいみたいなの。
それで、その人甘いものが苦手みたいで、好きな食べ物はおにぎりなんだって。
美味しいおにぎり屋さん、おじちゃん前に知っているって言っていたよね?
あたしの愛しの彼氏のために、買ってきてもらえないかな?」
楽しそうに会話する彼女の話す内容に、僕は背筋が凍る気分がしました。
「ありがとー!
おじちゃんって優しいんだね!
じゃあ今日の夜、待ってるね」
「バイバーイ」と、相手に見えないはずなのに手を振って別れを告げた彼女は、
通話を終えたようです。
「前園さんっ!
キミは一体何しているんですか!?」
「何って…セイくんおにぎり好きなんでしょ?」
軽々と教えてしまった数分前の僕が、憎らしいです。
「それは否定しませんけど…。
僕、行くなんて一言も言ってませんよね?
何故勝手に話を進めてしまうんですか、キミは!」
「だって同じ名字の有名人だよ?」
「別に僕は、次期総理大臣か何だか知りませんけど、会おうなんて思いません!」
先ほど一生会わないと誓ったはずなのに。
マイペースで強引な彼女に、簡単に誓いは踏みにじられてしまいました。


