「……おにぎり、ですかね?」
「おにぎり?」
「ええ」
「中身は?」
「おにぎりに中身をいれることなどは、僕にとっては邪道です」
「……変わってるね」
何もいれない、中身のない、海苔に巻かれただけの白ご飯のおにぎり。
それは僕にとって、とても思い出深い食べ物なのです。
「じゃあ、美味しい塩むすびを売っている場所、おじちゃんに聞いてみるね」
「……は?」
意味が分からず上体を起こすと、
彼女は制服のスカートからスマートフォンを取り出して鼻歌を歌いながら操作し始めました。
「あ、もしもし?おじちゃん?」
「ちょっ、キミ、何しているんですか?」
「今大丈夫?
すぐに話終わるんだけど…」
「前園さんっ!」
僕が何度も彼女の名前を呼びましたが、
彼女は気にも留めず、ペラペラと会話し始めてしまいました。


