「どうやら政志くん…愛ちゃんが他の人と喋るのが許せなかったみたいで…。
他の人と…男と女も関係なく…愛ちゃんが喋ると、政志くんは愛ちゃんに暴力を振るっていたそうなの。
勿論だけど、愛ちゃんにとっては初めての経験で…暫く学校に行けなかったの。
行けるような精神状態じゃなかったのよ。
部屋にずっと閉じこもって、ご飯も食べないで、1日中部屋の中でうずくまって泣きっぱなしだったの。
まともに話せるようになったのは、2日3日経った頃だったと思うわ…。
政志くんはその間、学校で愛ちゃんにしたことが全て公(おおやけ)になって…。
愛ちゃんが話せるようになってから暫く経った後、屋上から転落死したことが発覚したわ」
お茶を飲む芽衣子さん。
啜る音だけが聞こえる、静かなリビングでした。
「愛ちゃんはそれ以来…今と変わらぬよう明るくなったけど…暗闇と独りぼっちになるのを恐れるようになったわ。
明るく振る舞っていても、心ここにあらずと言う感じで…。
人形のように振る舞う日々が続いて行ったわ。
だけど今の高校に入って数日経った時、本当に嬉しそうな笑顔を浮かべた愛ちゃんが帰って来て…。
どうしたのって聞いたら…星夜くん、あなたに一目惚れしたって聞いたわ」
「……僕、ですか?」
「ええ。
星夜くんに一目惚れしてからというもの、愛ちゃんは人が変わったように明るくなったわ。
人形のように、今なら全く見えないもの。
星夜くんの話をする時は、愛ちゃん、心から笑っているわ。
高校へ入学当初は欠かさず飲むよう言われていた精神安定剤も、星夜くんに出会ってから量が少なくなって、今は手放せるようになるまでになったの。
だからわたしたちはね、星夜くんに会いたかったのよ。
愛ちゃんを変えてくれた、星夜くんに」
僕と出会ってから…まさか、変化しただなんて。
信じられませんでした。
僕は医者でも、カウンセラーでも、何でもないのに。
むしろ彼女を、傷つけてばかりだったはずなのに。


