「…桐生、と申します」
「……桐生?」
「はい…」
僕は、こうして他人の自宅へ行くのは初めてです。
どうやって挨拶すれば良いのかわからないので、
ぎこちなくですが自己紹介はします。
さすがに礼儀、というものが存在しますので。
「ママ?どうかした?」
「…ううん、何でもないの。
桐生くん、どうぞ?
大したおもてなしは出来ないけど、ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます」
もう1度会釈をして、靴を脱いで玄関に揃えます。
…気のせいでしょうか?
彼女のお母さん…芽衣子さんに、何だか見られている気がします。
「…あの」
「どうかした?」
「…以前、僕とお会いしましたか?」
「いいえ?
愛ちゃんから話は聞いていたけど、会うのは初めてよ?」
ふふっと上品な笑みを浮かべた芽衣子さんは、
奥へ引っ込んでいきます。
…僕の、気のせいだったのでしょうか?


