その日の夜。
あたしはセイくんに電話をかけた。
出てくれるかどうかわからなかったけど、出てくれた。
『もしもし?』
「セイくん?寝てた?」
『いえ、起きてました。
どうしました?』
「アルバイト、お疲れ様」
『…いきなりどうしたんです?』
「星川夜斗なんて、かっこいい名前つけたね」
『…………』
黙り込んでしまったセイくん。
わかりやすんだから。
『……どうでしたか?』
「あの馬鹿息子めって言っていたよ」
『…馬鹿じゃないです、僕は』
「素直じゃないなぁセイくんは」
『…僕はキミと違いますから』
「そんな所も好き、だよ?」
『…キミの好みを疑ってしまいますね』
クスクス、電話口でセイくんは笑っていた。
「セイくん」
『何です?』
「……お誕生日、おめでとう。
ハッピーバースデイ、セイくん。
それと、
親子の仲直り、おめでとう」
『……ありがと』
ポッポーポッポーと、部屋の壁に掛けられた鳩時計が、深夜零時を告げた。
言えて、良かった。
セイくんのお家では、言い忘れちゃったから。
ハッピーバースデイ、セイくん。
これからもずっと、あたしの傍に居てね。