「先ほどは失礼いたしました。
わたくし、桐生星太郎様の秘書で執事を務めております、宮口と申します。
星夜さんの家庭教師もしておりました」
「あたしこそ失礼しました。
あたしはセイくんの妻の、前園愛です」
「妻……?
星夜さん、結婚していらしたのですか?」
「宮口、本気にしないでください。
彼女が言っているのは、全て妄想ですから」
「妄想じゃないもん、決定していることだもん」
セイくんの家の、リビング。
初めて入ったけど、独り暮らしにしてはやけに広い。
家族4人で住んでも余裕あるかも。
にしても、ストーカーじゃなくて、執事さんだったんだ。
セイくんの幼い頃の話を聞いた時、宮口って名前の執事さんがいるって聞いたことある。
勉強したくなくて帰ろうとしなかったセイくんを迎えに来て、勉強を夜遅くまで教えていた家庭教師さんでもあったんだよね。
会うのは初めてだけど、想像より穏やかそう。
「しかし、あなたが前園愛様でしたか。
旦那様―――星太郎様から、お話は聞いておりました。
前園次郎様の、娘さんだと」
「うん」
「いつもいつも、旦那様や星夜さんと仲良くしてくださり、ありがとうございます」
ペコリと頭を下げられ、あたしは両手を振って、頭を上げるよう言った。
頑固な人って思っていたけど、物腰は結構柔らかいみたい。


