「僕は―――」




改めて彼女に名前を言おうとします。

きっと先ほど、
何も知らないで色々と言ってしまった彼女への申し訳なさからでしょうか。





「あっ、言わないで?」


「え?」




言わないで?

思わず気の抜けた声を出してしまいます。

…無理もないでしょう。

言おうとしたら止められたのですから。




「別に知らなくても良いかなって思っているんだ…あたし。
だって王子くんは王子くんだし。

あたしにとっての王子くんは、王子くんだけだよ」


「…どこのお伽噺ですか……?」


「…良いの。
お伽噺みたいだって言われても。

でも王子くんはあたしにとっての大事な人。
あたしにとっての好きな人。

王子くんは何があってもあたしの王子くんだよ?」





まるでこの世に暑さを降り注ぐ太陽のような明るく眩しい笑顔で、
彼女はニッコリ微笑みました。





例え僕が何をしたとしても

キミはきっと僕を否定しないんでしょうね…。