「ていうかセイくん、あたしのこと、愛って呼んでくれるようになったんだね?」
「ええ。僕の大事な人ですから」
「……セイくん、そんなストレートに言わないで。
あたしの心臓、もたない」
「ふふ。
いつかキミの心臓、壊して差し上げましょうか?」
「セイくんが言うと冗談に聞こえないから、止めて?」
僕はパタン、と本を閉じました。
「…やっぱり苦手ですね、この空間は」
「え?」
「……僕は少し、外の風を浴びてきます」
「あたしも行くー」
「では、教科書とノートと筆記用具を持ってきてください。
屋上で、僕が教えてあげますから」
「うんっ!
嫌いな勉強も、セイくんと一緒なら何でも出来ちゃうよ!」
鞄を持った彼女は、僕の隣に並んで、屋上への道を歩き始めます。
「手始めに、愛の成績を聞くか。
愛、成績いくつ?5段階評価の」
「あたしのこと呼び捨てっ?」
「良いから答えろ」
「えっとねー。
国語が2で、数学と理科が1で、社会も2!」
「…よく留年しなかったな」
「いやぁ、それほどでもぉ」
「褒めてない。
…やっぱり屋上行くの止めた。
教室で真面目に受けるぞ」
「えぇー!?
先生の授業聞いていると、眠くなっちゃうよ!」
「安心しろ。
そうしたら俺が起こしてやる。
授業聞いてねぇと…どうなる…カナ?」
「きゃあっ!
セイくん、それ、怖い!!」
「なら黙って俺の言うこと聞いとけ。
絶対に留年させねぇし、赤点取らせねぇから。
覚悟しとけ?」
「…ハイ…ガンバリマス……」
なぁ、愛。
俺から離れること、許さねぇから。
俺を愛した罪の味は、どうだ?
苦いか?
それとも……。
【END】