君と2人

「だからここの現代語訳はこうなる。わかった?」

「ああ、成程‥‥。これがこれになるんですか。」

「そうそう。」


得意だと言うだけあって、先輩の教え方は上手かった。
つまずきがちな現代語訳の部分も文法も、昨夜とは比べ物にならないくらいよく分かる。

(コツが分かればそんなに難しい科目じゃなかったんだ‥‥。)





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side 柚木澤薫


僕が教えたところを中心に復習に励む睦月を眺めながら、何一つ変わっていないなと微笑する。

睦月が僕を覚えていないことは分かっていたし、理解していたつもりだった。

けれど、あんなに僕を好いてくれていた彼女が僕にはじめまして、と言った現実を受け止めるのに時間がかかった。

部活の後輩として接することは難しい。


睦月は僕の大切な人だから。


睦月は覚えていない。
僕だけが覚えている全てを、いつ伝えるべきか。


(暫くはこの関係に落ち着くつもりだったんだけどな。)


部活の先輩、後輩。
もう少し言えばよく構ってくれる先輩。
今はそれでいい。


いつか睦月に全てを聞かせたい。



どれほど僕が君のことを大切に思っているかって。