君と2人

「じゃあ今日はここまで!」


如月先輩の言葉と共に張り詰めていた空気が弛緩する。


「遊佐ー、ちょっとこーい。」

「はい!」


私は如月先輩に呼ばれ、端の方に。

如月先輩は台本を捲りながら指を指す。
私もつられてのぞき込んだ。

「第1幕の3場なんだが‥‥」


第1幕の3場。
私が演じる王子が初めて登場するシーン。


登場は極めて地味で、ヒロインの後ろからのっそり出てくるというもの。


「もう少し勢いよく出てもいいんじゃないかと思うんだが。」


確かに、そういう解釈もある。
けれど私はあえてゆっくりのっそり出てくる出方を選んだ。


「次のヒロインのセリフが地味で気付かなかった、というものだと思っているんですけど‥‥。」


『‥‥本当に王子なの?』
というのが次にくるヒロインのセリフだ。


「氷音がどう演じるかによって変えたいと思っています。」


「主役はお前だぞ?」


「王子ならヒロインを優先する筈です。」



穏やかで優しく、ヒロインを何より大切に思う王子。
優先すべきは好きな人である姫の筈だから。