──私と北原君が座っている机の横側に机をつけて座る美姫が「なつの手作りだって」と北原君にいらない情報を教えている声にハッとする。
「ちょっと美姫! そういうこと言わないでよ」
「何で? 別にいいじゃない」
「よくないよ……」
私はボソボソ言いながら冷凍食品の唐揚げを箸でつつく。
特別料理が好きだったり上手いわけじゃない。
ただうちの両親が共働きで朝早いお母さんが大変だと思って自分のお弁当を作っているだけ。
「作ってるのは玉子焼きくらいだし」
あとは冷凍食品かウインナーがほとんど。
コンビニでパンを買ったりすることもよくある。
つついていた小さめな唐揚げ一個を箸でつまんで一気に口の中へ。
モグモグと噛んでいると北原君が私のお弁当をじっと見ているのに気がついた。
何だろうと思いながら玉子焼きを食べようと箸で挟んで持ち上げると北原君の視線も一緒に動く。
玉子焼きに何かついてる……?
手を動かして北原君のほうに向けていた玉子焼きの面を見てみるけど焼き色がついてるだけでおかしいところはない。
私はそれ以上気にしないでパクリと玉子焼きを口に含む。
「……なつ。それはないわ」
「ん?」
唐揚げに続いてモグモグと食べていると美姫が低い声を出した。
玉子焼きを飲みこんで横を見るとサンドイッチを手に持っている美姫が睨むように私を見ている。
「何が?」
「ううん、何でもない。北原くんごめんね?」
何で北原君に謝ってるんだろう?
北原君は困ったように笑ってるし。
二人だけで話が通じてる様子が気になったけど、美姫も北原君も教えてくれなかった。

