「青木さんのお弁当美味しそうだね」
「そっ、そうかな?」
お昼休み。
ニコニコと向かい合わせにした机の椅子に座っている相手に私は自分の顔がひきつっているのん感じている。
笑えてればいいんだけど自信は全くない。
──お昼休みになっていつものように美姫とお弁当を食べようと思っていた。
美姫が慣れたように私の前の人の席を借りて机を向かい合わせにする。
鞄からお弁当をとりだして机に置いたところでクラスの女子の一人が私達のところに急ぎ足で近づいてきて。
「ちょっと青木さん! のんびりお弁当出してる場合じゃないって!」
興奮した様子に美姫と視線を合わせて互いに首を傾げているとその子は教室の入り口を指差した。
「北原くんが青木さんを呼んでるんだから!」
「え……?」
指された指をたどって入り口を見るとそこには本当に北原君がいた。
しかもふわふわ笑顔全開でこっちを見ている。
「ここに連れてきたら?」
「えっ!?」
「時間なくなるしお昼ご飯を一緒に食べるくらいやすいもんじゃない」
「えぇー……」
「ほらいってきな」と言われて私は仕方なく立ち上がってドアのところまでのろのろと歩く。
「北原君……?」
昨日の無表情の北原君がちょっと怖くて忘れられなくて。
正直北原君と顔を合わせづらい。
彼の様子をみるように名前を呼んでみると笑顔のままでちょっと安心。
だけどいつまた別人バージョンになるか分からないから緊張する。
「いきなりきてごめん。よかったら一緒に昼ご飯を食べられないかなって思って……」
眉を下げて少し困ったような顔で言う北原君に私はいいよと言うのがためらわれる。
だってまたあんな無表情を向けられたらお昼ご飯どころじゃなくなると思うし。
あーとかうーとか声を出して悩んでたらいつの間にか北原君の姿がなくなってた。
え!? もしかして諦めてくれたのかな!
よかったーとホッと息を吐き出して、さあ美姫のところに戻ろうと後ろの方へと振り向いたら。
「西園寺さんありがとう」
「いいえー」
美姫が座っていた場所に北原君が座ろうとしていた。

