「それって北原くんがなつのこと好きだからじゃない?」

北原君にケーキをごちそうしてもらった次の日、教室で美姫に昨日あったことを話すと美姫はニヤニヤとからかうような顔でそう言ってきた。

「そんなまさか。だって話したのは傘を貸した時が初めてだったんだよ?」

にぎやかな休み時間の教室で、お菓子片手に冗談でしょと笑ってみせる。

たった二日前のことなのにそんな短い間で好きになるなんて信じられない。

「美姫みたいな美人とか校内で有名な可愛い人とかならまだ分かるけど、健康が取り柄なだけの私を好きなんてありえないって」

「またあんたはそうやって自分を悪く言う」

「いたっ」

はあと息を吐いた美姫が私にデコピンをお見舞いしてくる。

うっ、地味に痛いんだけど……!

デコピンされたところをさすっていると美姫がふわっと笑った。

さっきまでのからかうようなものじゃなくて、見た人が足を止めて振り返るような綺麗な笑顔。

「誰にだっていいところも悪いところもあるものなの。あたしはなつのいいところをいくつも知ってるし?」

「えっ、うそ!?」

一つどころかいくつもなんて美姫は私をよく見すぎなんじゃない?

そう思って美姫をじっと見ても彼女は否定しないし教えてもくれない。

「なつはそのままでいてよね」と頭をなでてくる美姫に「美姫がそういうなら……」と言いながらも私は微妙な気持ちになった。