「青木さんはあの人が好きなの?」

「え!? 違う違う! 佐藤君は同じクラスの人だから」

トン、トン、と持ち帰りのケーキが入っているだろう箱をテーブルの上で上下に動かして立ったまま私を見る北原君に顔の前で手を勢いよく横に振る。

まさかそんなことを聞かれるなんて予想外もいいところ。

「偶然会っただけだよ」

「本当に?」

無表情のまま目だけをすっと細めて見下ろしてくる北原君に勢いよく頷いてみせる。

誤解されて噂にでもなったら大変だ。

佐藤君を好きな女子は多い。

ライバルは一人でも少ない方がいいなんてもしもいじめでもあったら絶対に嫌だ。

「本当に?」

「うん」

「本当に本当?」

「うん」

「嘘じゃないよね?」

「もちろん!」

信じてほしくて私は何度もうなずく。

クラスメイトだし人としていい人だなあと思うけど恋愛的な好きという気持ちはない。

「信じて!」そう気持ちをこめて北原君の目をじっと見ているとふっと空気が動いたような気配。

「ならよかった」

一瞬でふにゃんと笑う表情になった北原君。

まるで夢か幻を見せられたような気がして私はポカンと口を半開きにしてしまう。

「そろそろ帰ろう」

ふわふわバージョンに戻った北原君に言われ、ケーキを持っていないほうの手で片手を引かれてお店を出る。

帰り道を一緒に歩きながら、何で北原君が私のことを気にするんだろうかと心の中は疑問でいっぱいだった。