連れてこられたのは入ったことのない一軒のケーキ屋さん。

可愛い飾りつけがされている店内、ケーキを見たり席に着いて食べたりしているまわりのお客さん達。

「好きな物を選んでね」

ショーケースに並んでいるケーキの前で、はずんだ声で言う北原君と戸惑う私。

まわりから浮いている気がする……。

パッと見渡した店内は女の子ばかりで男の子の姿は見当たらない。

甘い物が好きな男の子もいるから一人や二人はいるのかなと思ったけど、今は北原君しか男の子はいなさそうだった。

「ここのケーキはどれも美味しいんだよ? 俺のおすすめは期間限定のやつかな」

「おっ、おいしそうだね……」

「そうでしょ? すみませーん! このケーキ二つください」

「えっ!?」

私が戸惑っているうちに北原君は期間限定のケーキがいいと思ったらしく注文してしまった。

しかも店内で食べるとつけたして。

私はどうしたらいいの……!?

すっかり北原君のペースにのまれているような気がして、ここに美姫がいてくれたらいいのにと店員さんからケーキを受けとる北原君をぼんやり見ながら思ってしまった。