「セレルナ、これもあなたに渡すわね」 王妃は大きなケースを王女に渡す。 「…ヴァイオリン?」 「えぇ。セレルナにあげるって約束よね?」 「それは、16歳になったらという話では?」 王女が首を傾げた。 「もう、会えないかもしれないでしょう?」 哀しそうな瞳が王女を優しく見つめる。 王妃の表情はとても辛そうにみえた。 大切な我が娘を逃がそうとしている。 でもそれは、もう会えなくなってしまうかもしれないということでもある。