中学3年生のとき、必死に勉強して合格した志望校。

高宮(たかみや)高等学校の芸能コース。

私、神田羽香はあまり勉強が得意ではない。

入学後実力試験の結果が返ってきた今日。

激しく落ち込んでいた。

もっと勉強すればよかったなぁ…。

でもでも、お仕事とかあって全然できなかったんだもん…。

「羽香ー!テストどうだった?」

話しかけてきたのは、同じ芸能コースでアイドルグループに入っている若宮翼(わかみやつばさ)。

「翼…。この私の表情が目に入らないかなぁ?」

そう言うと翼は、顎に掌を乗せて「なるほど。悪かった、と」と言った。

「そう言う翼は?」

「私?クラス3位」

完璧なんですか、この子…。

「はぁ…。翼はグループの中でも人気なほうなの?」

その質問に表情が固まる翼。

「え?5人組アイドルに格差なんてないよ」

「そうなの?なんか推しメンとか言うじゃん」

「言うけど、基本は全員が好きで、中でもこの子って感じなの」

そこまで聞いて、ユニット"Tiara"のことを思い出す。

「私も今度さー、事務所の子たちとユニット組むことになったんだけど、3人でも推しメンとか言うのかな?」

素朴な疑問を翼にぶつける。

「言うんじゃない?3人の中でもこの子!ってあると思うよ」

「そっか…」

まぁ、きっとそれでケンカになったりはないだろうけど…。

「とにかくさ、羽香が元気ないと落ち着かないから、元気出しな」

そう言われて、え、私そんな落ち込んでた?と今までを思い返す。

「あ!私5月16日が誕生日なんだけど、バースデーイベントのことで仕事入ってるんだった!」

「は?なんでここで思い出したの?」

「私が元気なかったらファンのみんなも元気なくすかなーって考えたら思い出した」

「めちゃくちゃだなぁ…もう…」

「じゃあね」と一言残して事務所に急ぐ。

落ち込んでしまうことも、ファンのみんなのことを思うと元気に変わってしまうのだ。





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