「猫拾ってきたの?」 やがて手を止めた母は振り返った。 「それで猫はどこにいるの?」 「あたしの部屋。」 ぼそっと言った郁に母は、 「連れてきなさい。」 とだけ言って、冷蔵庫から牛乳を出すとそれを皿に入れて床に置いた。 間もなく郁が猫を連れてくる。 「白にゃんこ。」 母は白の小さな頭を人差し指で撫でた。 郁の顔が緩む。 「ねぇ、飼っていいでしょ?」 郁は白を床に置いて、牛乳を飲み始めるのを確認して言った。