男はかにかまを入れ物から取り出して、手にちぎって乗せ、黒に差し出した。 黒はそれをまじまじと観察する。 ひゃふ、と噛み付いて、もぐもぐ、一生懸命噛み続けた。 黒はこの味を知っていると思った。 どこかで食べたことがあった。 久しぶりのご飯はお腹の隅々まで染み渡り、黒を満腹へ導いていく。 「おいしい。」 黒が一息ついたとこで、男が続けた。 「僕があなたの願いを、一つ叶えて差し上げます。」