「ねぇ……」
桜が、やっと襟を離してくれた。
「ひなと……遊園地行ったでしょ?」
桜の顔が……今にも泣きそうだ。
「あの日からひなが……泣いてばかりなのよ」
「成瀬さんが……?」
泣いてばかり?
教室では、いつも笑顔じゃないか。
「遊園地の日なにがあったのか知らないけど、その泣く原因を作ったのは、あんたしかいないからね」
「え……俺?」
「……────────」
俺は、走り出した。
「まって、蒼衣くん!!」
桜の声が、後ろから聞こえるけど、そんなの気にしない。
とにかく俺は、走る。
あの人の元へ。