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「『水面合わせ鏡』か……」

幼い手にはまだ大きい手鏡を持った少女が呟いた。

少女がいる場所は学校の敷地内にあるプール。塩素の臭いがする薄暗い室内のプールには少女しかいない。

彼女の名前は松木愛奈(マツキ アイナ)。小学校3年生。

偶然『水面合わせ鏡』の話を聞いた愛奈は話が本当かどうかを試そうとしていた。

用意していた小さな時計を見てみれば、現在4時40分。水面合わせ鏡をするにはまだ早い時間だ。

愛奈は試にプールの水面と鏡を向かい合わせにして覗き込んでみた。

しかし、水面に映る鏡は合せ鏡になっていなかった。鏡にプールの底がうつっているだけだ。

「本当なのかな……」

だんだん疑わしい気持ちが大きくなる。

だが、愛奈は4時44分になるまで待った。

そして44分の1分前。

愛奈は念のため周りに人がいないことを確認すると、鏡を持って準備をした。